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シミに関係した紳胞が肌の弾力やハリを守る②

そんな色素細胞とお肌の崩壊は、認知症の患者さんでよく見かけられます。なぜならば、色素細胞は神経の一種であり、脳の神経細胞がダメージを受ける認知症の患者さんでは、色素細胞も破壊されてしまうからです。ここで、色素細胞と関係のある神経のお話を少しさせてください。神経といえば、脳の神経細胞から脊髄へとつながって、そこから全身へと結ぶネットワークが構築されています。脳が巨大都市とすれば脊髄は幹線道路です。大きな道路から側道がつながっているように、神経は臓器や肌などに向かって張り巡らされています。道路を走る車のように、神経には「神経伝達物質」による指令が走り、その指令によって電流のようなものが流されることで神経は働く仕組みになっています。

たとえば、手が熱い鍋に触れたときには、熱いと感じると同時に手は鍋から瞬時に離れます。頭で「熱いから手を離す」と考える前に手は熱い鍋から離れ、頭では「熱かった」と過去形で思うはずです。「手を離す」と考えてから行動しては、その間に、手は熱い鍋で火傷をしてしまいます。そのため、「熱い」と感じる指令は、側道から幹線道路に入るまでにすでに「手を引っ込める」という情報を神経に流しているのです。幹線道路の終着点にある脳にその情報が届くのは、「手を引っ込める」伝令が流された後になります。このように、脳で考えて指令を送るというよりも、脊髄や末梢神経で瞬時に反応できる仕組みを神経組織は持っているのです。神経の一種である色素細胞も、紫外線を強く浴びたときには、肌を防御すべく自然にメラニン色素を作るように設計されています。

その都度、脳で考えなくても色素細胞が反応しているのです。そして、脳で「シミを作りたくない。メラニン色素を増やさないで」と考えても、末端の神経系で行われている反応はコントロールできません。ところが、脳に行った出来事が、色素細胞に影響を及ぼすことがあるのです。それは、認知症の患者さんで良く見られる「褥瘡」という肌の病気で、床ずれによって肌の組織が壊死するのが特徴です。認知症の患者さんは、アルツハイマー病や脳血管障害などによって脳の神経細胞が極端に少なくなり、進行すると寝たきりの状態にもなります。ご自身で寝返りも打てなくなるため、床ずれを生じやすいのですが、そこに色素細胞が関与しているのです。